ヤギさんを見ていると、草を食べていない時に、口いっぱいに食べ物を反芻(はんすう)してもぐもぐしていることがよくあります。
目が合ったなーと思ったら「うっぷ……」という感じで、何度も反芻しては飲み込む仕草をします。それはヤギ飼いさん達がハマる、特別愛らしい姿なのではないかと思います。
ところでこの反芻、なぜ頻繁に行うのでしょうか?ヤギの体がどうなっているのか気になりますよね。
ということで、実際に2頭のトカラヤギを飼っている筆者が解説をしてみます!
この記事では、反芻動物の胃は4つ、第一胃(ルーメン)の役割、反芻する理由、反芻は健康の証、といったトピックに沿ってご紹介しています。
これでヤギのラブリーな姿である反芻のことが理解できますように!
反芻動物の胃は4つ
意外に思われるかもですが、ヤギはウシの仲間です。体の大きさこそ違うものの、目の形、歩き方、座り方などよく観察すると似ている点がたくさんあります。
そして何といっても「反芻動物」という共通点があります。
そしてこの反芻動物の最大の特徴は、胃袋が4つあることです!
4つはそれぞれ、
- 第一胃(ルーメン)
- 第二胃
- 第三胃
- 第四胃
と呼ばれます。
※人間が持つ胃の働き(消化液利用)をするのは第四胃。
ルーメンは4つの胃のうち一番大きく、なんと80%を占めるそうです。消化管全体で見ても約半分を占めているのだとか。なんて大きな臓器でしょう!
第一胃(ルーメン)の役割
4つの胃のなかで最も大きなルーメン。その役割はどんなところにあるのでしょうか?
ルーメンはざっくり言うと、草の繊維質を分解できる微生物や細菌の棲み処です。
そして最終的に、ヤギの活動源になるガス(揮発性脂肪酸=VFA)を生み出す場所です。
ヤギのエネルギー源は、草の炭水化物にあります。
草の炭水化物は以下の2つに分けられます。
- デンプンなどの糖類
- セルロースなどの繊維質
このうち繊維質については、ヤギは自力で分解する酵素を持ち合わせていません。
そこで、第一胃であるルーメンには繊維質が好きな微生物、細菌類、真菌類がいて、繊維質を分解してもらえる!ということなのです。
一方でヤギは、ルーメンがあるお陰で50~80%も分解できるのだとか!
繊維質を分解したあとは、ルーメン内の酵素を使ってヤギが活動できるエネルギーへと変換されていくそうです。具体的には、揮発性脂肪酸(VFA)と言われるガスになります。
反芻する理由
ここまでで反芻動物の胃やルーメンのことが分かったところで、肝心の「なぜ反芻するのか?」にようやく入っていけます。
【ここまでを簡単に復習】反芻動物が持つ4つの胃のうち、第一胃(ルーメン)には細菌や微生物がたくさんいて、草の繊維質を分解してもらえる。それを利用して、最終的にヤギのエネルギー源となるガスが発生する。
ヤギさんがもぐもぐ反芻する理由は、実はルーメンにいる微生物たちの為と言えます。
何度も反芻することで食べ物と唾液をよく混ぜて、ルーメン内が「中性」になることで、微生物たちにとって居心地の良い環境になるのだそう。
ルーメンにいる微生物にとって、
- 温度一定
- 嫌気性(けんきせい)=酸素が嫌い
- 中性
な場所は好適環境と言えるんだそう。
反芻は健康の証
反芻はヤギにとって、そしてルーメン内にいる微生物にとって大切な行為ということが分かりました。
実は反芻は、ヤギが健康か否か?の観察基準のひとつになります。健康状態を知るのに分かりやすいのはフンの状態ですが、反芻の回数も健康チェックには欠かせません。
具体的な「健康チェックの方法」については以下の記事でもご紹介中です。
穀類やマメ科の草を与えすぎるとルーメンでガスが発生し過ぎてしまい、ゲップが出せなくなったり、反芻が弱くなったりします。鼓張症などの病気に繋がりますので気を付けます。
原っぱでのんびりもぐもぐしていれば、ヤギは幸せで健康なはずです。愛らしい姿に癒されつつ、ぜひ健康であることも同時に確認してみてください。
まとめ
ここまで反芻にまつわるお話をしてきました。人間とは違った体の作りをしているので、とても興味深いですね。ではまた。
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