自宅の敷地内にある建物(居宅、倉庫、物置など登記されている建物)を取り壊した際には、法務局への申請が必要となります。具体的には「建物滅失登記」もしくは付属建物滅失による「建物表題変更登記」と呼ばれています。
依頼すれば土地家屋調査士が代行してくれる作業ですが、きちんと書類を集めれば自分でできます。そうであれば自分で行いたいですよね!
そこで実際に自分で申請を行った筆者がその方法を解説します。
この記事では、申請が必要な場面、建物滅失登記と建物表題変更登記の違い、必要な書類、書類の書き方をご紹介しています。
これで費用をかけずに自分で建物滅失登記と建物表題変更登記ができるようになります!
どんな状況だと申請が必要になるのか?
まずどういった状況の場合に申請が必要になるのか明確にするため、一例として私たちの事例をご紹介しておきます。
時系列で並べてみます。
不動産屋から古民家(と付属の建物)を購入
⇓
車2,3台が入る物置が古かったため取り壊しを決定
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不動産屋が取り壊しを担当してくれることになる
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工事完了(※証明書をもらう)
⇓
法務局へ行き申請する
私たちの場合は、物置を取り壊した(滅失した)ので申請が必要となります。
このように、もし登記されている建物を取り壊した場合には必ず法務局へ報告するようにしましょう。理由は、この手続きが義務付けられているからです。
不動産登記法によると、建物取り壊し後、1か月以内に登記申請が必要となります。これを怠った場合、10万円以下の過料(行政上支払わせる金銭のこと)を処せられることになっています。
ただし、あくまで実態は1か月過ぎたのちに申請しても過料を科されることは今のところないようです。とは言えなるべく手続きは速やかに行いましょう!
今回の記事では建物取り壊し(滅失)のパターンをご紹介していますが、以下のような場合にも法務局への報告が義務付けられています。参考までに載せておきます。
- 建物を新築した
- (または表題登記がない建物を取得した)
- 建物が滅失した
- 増築した
- 土地の地目に変更があった
ちなみにこれらの手続きを代行してくれる専門家が土地家屋調査士と呼ばれる方々です。
一般的に5万円程度の費用がかかるんだそうですが、今回法務局の方の指導をもらいつつ一人で申請できたので、費用を浮かせたい方はご自身で行ってみて下さい。
必要書類は、記事後半に全部書いてます。
ここまでざっと建物取り壊し(プラス上に書いた5つ)の際、法務局への申請が必須なことを説明してきました。
「建物滅失登記」と「建物表題変更登記」の違いは?
取り壊した建物によって、登記申請の呼び方が変わります。
主である建物を壊した場合 登記簿(全部事項証明書)表題部のうち、
→「建物滅失登記」
付属建物を壊した場合 登記簿(全部事項証明書)表題部のうち、
→「建物表題変更登記」
分からない場合は、登記簿(全部事項証明書)を確認して、取り壊した建物が「主」であるのか「付属建物」であるのか、判断します。

全部事項証明書の見本(ざっくりすぎ)を作りました。「主」である建物は赤で囲った下部に、「付属建物」は緑で囲った下部に記載があるはずです。これで見分けます。
実際私が行った手続きは「建物表題変更登記」にあたりました。取り壊した物置が「付属建物」だったからです。
いずれにしても私が住む地域(水戸地方法務局)の場合、どちらも申請手順と必要書類は同じなのだとか。正直この2パターンで申請方法等が異なるのか気になるところでしたが、同じなんですね。
必要な書類
集める書類は以下です。
- 登記申請書(付属建物滅失)
- 代理権限証書(委任状)
- 建物図面・各階平面図
- 周辺地図(google map等の印刷物)
- レターパック赤(登記完了証を郵送してもらう用)
- 建物取毀証明書
- 取り壊し業者の印鑑証明書(大工さんなど個人の場合は、個人の印鑑証明書)
※6と7は解体業者に依頼します。
各項目の説明と書き方は以下から始めます。
書類の書き方
ここでご紹介するのは私たちの物件用に使ったものであり、あくまで一例です。個々の事例により異なる部分があると思いますので、ご留意ください。
できれば法務局を訪問し、担当者の方と一緒に行うことをおすすめします。法務局では随時相談ブースを設けて、個別相談を行っていますので事前予約のうえ訪ねてみて下さい。
【1】登記申請書(付属建物滅失)

用紙は法務局で頂きました。色付けした箇所を以下の要領に従い、それぞれ埋めていきます。
青い箇所は、申請した日付。
赤い箇所は、申請人(建物所有者)の住所(住民票記載の住所)、氏名。
緑の箇所は、代理人(委任状で依頼された方)の住所(住民票記載の住所)、氏名、印鑑、電話番号。
黄色い箇所は、全部事項証明書に記載された不動産番号。
オレンジの箇所は、全部事項証明書に記載された所在(通常の住所には記載しない「字/あざ」が入っていることも)、家屋番号。
グレーの箇所は、全部事項証明書に記載された主たる建物。
グレーの下段にある箇所は今回取り壊した建物の情報を記載します。
【2】代理権限証書(委任状)

用紙は法務局で頂きました。色付けした箇所を以下の要領に従い、それぞれ埋めていきます。
赤い箇所は、代理人の住所(住民票記載の住所)、氏名。我が家で言えば妻の私になります。
黄色い箇所は、建物取り壊し業者から受け取る「【6】建物取毀証明書」に記載された日付を入れます。
青い箇所は、書類の提出日、取り壊した建物所有者の住所(住民票記載の住所)、氏名、印鑑(×2か所/氏名横と書類右上)。
緑の箇所は、全部事項証明書に記載された内容をそっくりそのまま写します。所在は「字/あざ」まで記入する点に注意です。
グレーの箇所(書類の一番右上)は、自分で追記します。追記するのは「2字削除、2字追記」の文言です。緑の箇所(建物の表示)で二文字直しているので、その補足の意味なのだとか。
【3】建物図面・各階平面図
法務局で取得し、そのコピーをお渡しします。あらかじめ持っていた方はそれでOK。
【4】周辺地図(google map等の印刷物)
ご自宅の場所が分かればOKだそうです。地域で配布される地図、グーグルマップ等の印刷物など、なんでもよいそうです。
【5】レターパック赤
すべての申請が完了すると、後日輸送で完了証なるものを送って下さるそうです。
そのために前もってレターパックを持参すると便利です。2020年現在で520円で購入可能です。郵便局の他、ミニストップなど一部のコンビニでも手に入ります。
【6】建物取毀証明書

建物を取り壊してもらった業者さんに依頼して作成してもらいます。
法務局で用紙を頂くこともできますが、もともと自社でテンプレートを持っていらっしゃる場合もありますので、解体業者さんに尋ねてみましょう。テンプレートがなくても、必要事項がきちんとかかれていれば手作りでもOKです。
注意点は、取り壊しの日付です。こちらはとても大切な日にちになるので、しっかりと記載してもらいましょう!
「【2】委任状」にもこの日付をかく箇所がありましたね。
【7】取り壊し業者の印鑑証明書
こちらの書類も解体業者さんに用意してもらいます。大工さんなど個人が解体に携わった場合は、個人の印鑑証明書を添付します。
♢
以上で書類は全部揃いました。こちらを持って、取り壊した建物を管轄する法務局へ行きます。
申請が済むと、約一か月程度で完了証が送付されてくるそうです。
市町村役場へ「家屋滅失届」を提出
法務局での手続きが終了したら、お次は市町村役場へ建物取り壊しの報告(家屋滅失届という)が必要になります。
ただし、市町村役場によっては法務局での手続きが終了していれば、改めて市町村役場への申請は必要ないことがあります。
地域により異なりますので、取り壊した建物が存在した役所の公式ホームページをご確認下さい。
調べたうえで「家屋滅失届」の申請が必要な場合は、以下の記事をご参照下さい。

まとめ
ここまで自宅の敷地内にある建物を取り壊した際に必要となる登記の流れをご紹介してきました。
手間がかかりますが、専門家に依頼することなくご自身で行えばまとまった費用が浮くのでおすすめです。ではまた。
