地方へ移住しようと考えたとき「農業をやろう」と考える方も多いと思います。
といっても、いきなり農業をやろうと思っても、何の技術もノウハウもない状態では始められないので、専門学校に通うこと、農業研修生として働くこと、農業法人に就職するか等で迷うと思います。
ということで、この記事では、2012年に実際に筆者が1年間農業研修を体験した事例を紹介するとともに、他の農業研修生の様子を紹介しています。
どちらも有機野菜を作っている農場です。有機農業で新規就農を目指す方の参考になってくれればうれしいです。
研修をはじめる前に
「農業研修」を始める前に、どのような農業がしたいのか、イメージを膨らませておくことが大切です。
農業のことが分からないから農業研修するため、イメージがわかない方も多いかもしれませんが、現時点でどんな農業がしたいのかは考える必要があります。
また、農業研修前に、農業体験やアルバイトなどを通して、いくつかの農業経営のパターンを見ておくのもいいですね。
この記事では「有機農業」を行うことを前提に解説していきますが、有機農業といっても、経営スタイルは様々です。
- たくさん有機野菜を生産したい(職人型)
- 野菜と卵のセットの販売から始めたい(直売型)
- 農業を体験してもらいたい(イベント型)
- 野菜を加工して販売したい(六次産業化)
……など
この記事では、2つの農業研修先のイメージをお伝えしますが、自分に合った研修先を選ぶことが大切であることを忘れないでください。
暮らしの実験室やさと農場
まずは、茨城県石岡市にある「暮らしの実験室やさと農場」を紹介します。
「イベント型」、「直売型」の農場です。
この農場はもともと消費者が安全な食べ物を求めて、自ら作った有機農場です。鶏・豚を飼い、そこから作る堆肥で、年間約60種類の有機野菜を育てています。
販売は、100人くらいの会員向けに、野菜・卵のセットを送っていました。また、週末には「農」に関わるイベントを行っています。
私が研修していた当時は、4人のスタッフと2人の研修生が働いていました。それぞれの役割が決まっていましたが、研修生は野菜の生産が主で、豚さんの世話も行っていました。
研修期間は1年間で、この農業研修により、年間を通した野菜の生産を広く学ぶことができ、農業の新たな可能性を感じさせてくれます。研修就農後には、自分に合った農業とは何か?を見つけられるかもしれません。
営農情報
- 主要作付作物 特になし
- およその品目数 約年間60品目品目
- 水稲 60a (有機率100%)
- 畑作 100a (有機率100%)
- 野菜 90a (有機率100%)
- 施設 1a (有機率100%)
- 牧草地 9a (有機率100%)
- 畜産 有り
- 鶏 おおよそ400羽
- 豚 おおよそ20頭
身につくスキル
「暮らしの実験室やさと農場」の1年間の研修生活で、私自身が学んだスキルはたくさんありますが、例えば以下です。
- なんとなく年間を通した作付け
- 自分にあった販売戦略
- 自分が得意な作業と苦手な作業
- 命の大切さ、食べ物を作る大変さ
- 暮らしや働くことについての哲学的な変化
……など
農業研修で身につくスキルは、もちろん野菜の生産技術なのですが、前述したとおり、農場の雰囲気で学べることは大きく違います。
例えば、イベント型の農場で身についた生産技術では、職人型の出荷農家として働くにはやや不足でしょう。
大規模農場で研修した場合、作付けする品目が少なくなり、多品目の野菜の生産ノウハウが得られない一方、特化した専門的な技術が学べるはずです。
研修生活の様子
農場内の家で共同生活を行います。
働く時間は季節によって異なりますが、夏は朝早くから夕方遅くまで働きますが、昼休みが長い感じで、冬は時短です。
食事は当番制で、食事当番が1週間の昼・夜ご飯を準備します。朝は各自でした。
給料
当時、毎月2万円のおこづかいが支給されました。共同生活している建物内に1室が与えてもらえて、3食付いています。
JAやさと・ゆめファーム
JAやさとが行う新規就農研修事業の「ゆめファーム」は、「職人型」の農業研修が受けられる研修施設です。
研修期間中は、青年就農給付金(準備型)が受けられ、研修生は売上の中から研修で利用する各種資材を農協より購入し、独立した農家に最も近い形で研修を行います。
研修は2年間で、毎年1家族ずつの受け入れがあるため、同時期に2家族が研修を行います。先輩研修生と一緒に学ぶ感じです。
研修農場(1.5ha)、パイプハウス、トラクター、管理機などの農機具は農協が提供してくれ、研修生は栽培からJAを通した販売までを自分で行います。
必要な技術は実技を通して身につけ、また不十分な部分については農協の有機栽培部会での生産者仲間へ相談したり、指導を受けたりすることで学んでいくことが出来ます。
特徴や条件
研修生となるには既婚者で家族単位での応募が必須です。年齢は40才まで(青年就農給付金(準備型)を受けられる年齢内)。
研修は2年間。毎年1家族ずつの受け入れがあるため、同時期に2家族が研修を行うことになります。
研修農場(1.5ha)、パイプハウス、トラクター、管理機などの農機具は農協が提供してくれます。
研修生は栽培からJAを通した販売までを自分で行い、必要な技術は実技を通して身につけます。また農協の有機栽培部会での生産者仲間へ相談、指導により学ぶことができます。
身につくスキル
職人型の「JAやさと・ゆめファーム」で研修している方を見ていると、販路は農協が開拓してくれていて安心でき、その分生産に集中して学ぶことが出来ていました。丁寧に見た目もよい野菜づくりを学べます。
研修生は、多品目の野菜を実戦形式で作付けしていました。生産から出荷までしっかりした農業を学ぶことが出来ます。
研修生活の様子
夫婦で研修を受けるため、通える範囲にアパート等を借りて研修を受けるそうです。
給料
給料という形ではなく青年就農給付金(準備型)を受給しながら研修を行う。
まとめ
この記事では、2つの農業研修先について解説しながら、有機農業の研修がどんな感じなのか説明しました。それぞれの受け入れ先が、異なる経営・哲学で運営しているので、自分に合った研修先を見つけることが大切です。
イベント型・直売型の農場では、生産技術を極めるのではなく、旬の野菜を省力で作る方法を学びながら、自分の農業哲学を深めていく時間でした。
一方、職人型の農業は、販路は既存のものを活用できることを前提に、しっかりした生産技術を身に付けるのを第一にしているように思えます。
これから地方に移住し、「就農」したいと思う方の参考になってくれれば嬉しいです。