気候変動、戦争、燃料高騰、私たちの暮らしは豊かになっても不安がなくなることはありません。田舎暮らしをきっかけに、自分たちの食べ物をちょっとでも作れるようになりたいと思う方も多いのではないでしょうか?
しかし、自給自足といっても、何でも自分で出来るようになるのは大変です。
この記事では「最低限何が必要か?」という視点で炭水化物、特にじゃがいもの自給自足について考えてきます。なぜじゃがいもかというと、農林水産省が食料が輸入できなくなった時を想定して「不足時の食料安全保障マニュアル」を作成していて、そこで食事の中心となる食材がじゃがいもだからです。
有事の際に炭水化物のほとんどをじゃがいもから摂取するための量を「ケース1」、一般的に年間消費するじゃがいもの量を「ケース2」として、どのくらいの量、どのくらいの生産面積が必要かを計算します。加えて、実際にどのくらい生産できたか私たちの家庭菜園の結果も紹介しますので参考にしてください。
まずはちょっとだけ自給自足してみる“プチ自給自足”をすることで、心にゆとりを持ち、体にしみこむように技術も身に付けて行けたら良いと考えています。共感しながら読んでいただけると幸いです。
【ケース1】じゃがいも中心の暮らしが出来るくらい作る
農林水産省が想定している有事の食事
農林水産省は、食料が輸入できなくなった時を想定して「不足時の食料安全保障マニュアル」を作成しています。
またこのマニュアルを子どもにも分かるように作成した「いちばん身近な「食べ物」の話」という冊子があります。この冊子の中に、食料輸入がなくなった時について記載があります。
仮に、食料の輸入がなくなったとしても、現在の食生活からは大きく変わりますが、いも類など熱量の高い作物への生産転換などにより、国内農業だけで1人1日当たり2,020kcalの供給が可能と試算しています。
この食事例を参考に、私たちの“プチ自給自足”を考えると、熱量(炭水化物)として「じゃがいも」の生産が重要ではないかと思えました。
有事の炭水化物を賄うには?
じゃがいもは作りやすい野菜の1つです。戦争を経験したおじいちゃんやおばあちゃんの話では、米だけではなく「じゃがいも」や「さつまいも」を食べていたことを聞いています。有事には芋でしのぐのは正しい判断なのかもしれません。
上記の農水省のイラストでは「じゃがいも」と「さつまいも」を合わせて1日750g食べることになっています。2人なら1.5キロ。
2人が1年に食べる量=1.5(kg/日)×365(日)=547.5(kg/年)
すなわち、有事が1年間続くのであれば、547.5キロのいも類が必要になるということです。
さつまいもが好きな妻には申し訳ないですが、仮に全部じゃがいもで賄うというシミュレーションをしてみます。都道府県データランキングによると、面積当たりのじゃがいもの収穫量を示す“反収”は茨城県において2,748kgです。また北海道を除く全国平均は2,061kgなので2つの値で計算します。
生産面積(茨城県での反収の場合)=547.5(kg)÷2,748(kg/反)=0.199(反)
生産面積(北海道を除く全国平均の場合)=547.5(kg)÷2,061(kg/反)=0.266(反)
すなわち2畝(=0.2反≒2アール)から3畝(≒0.3反)で2人の「いも類」が自給自足できる計算です。生産技術によって大きく違うと思いますが、それほど大きな面積が必要ないことが分かりました。
ちなみに1アールは10メートル×10メートルです。
【ケース2】1年間に消費するじゃがいもを自分でつくる
【ケース1】では有事の時に生き延びるためのじゃがいも生産量を紹介しましたが、そんなに作ったら食べきれない、普通に1年間消費するじゃがいもを作りたいという方も多いと思います。
【ケース2】では一般的な家庭で消費する量を生産することを考えてみます。
日本において1人当たり1年間に購入するじゃがいもは22.6個です(じゃがいも1個の重さを100gとして計算)。夫婦2人暮らしを想定すると45.2個(=4.52kg)になります。
次に、約45個(4.5kg)のじゃがいもを作る面積を計算します。
生産面積(茨城県での反収の場合)=4.52(kg)÷2,748(kg/反)=0.0016(反)
分かりやすくするため、平方メートルで示します。1反は約991平方メートルです。そのため1.59平方メートルあれば十分ということになります。
生産面積(北海道を除く全国平均の場合)=4.52(kg)÷2,061(kg/反)=0.0022(反)
北海道を除く全国平均値を使った場合も2.18平方メートルです。
種芋2~3個をカットして植えたら、2人分のじゃがいもが作れる目安になります。
ただしこのデータは総務省統計局「家計調査」から各都道府県の1人当たりの支出金額を算定し、総務省統計局「小売物価統計調査」を利用し、各都道府県の物価を反映させ、消費量を算定したものです。購入量と消費量には差があり、例えば家庭菜園でつくった分などが反映されていません。実際はもう少し多く食べている可能性があります。
実際にじゃがいもを育ててみた成果
私たちは、毎年種芋を2kgくらい購入して、昨年食べきれなかった芋を少し加えて、作付けしています。およそ10平方メートルの家庭菜園で20キロ弱収穫できました。2人で1年間食べるのには十分です。
夏ごろから芽が出てくるので、芽のまわりを除いて食べる必要があるので、今年は秋じゃがに挑戦中です。
有事ではない現時点では、そんなにたくさんのじゃがいもを必要としませんが、普段からじゃがいもを作って、ライフスタイルに組み込みたいですね。
さいごに
この記事では、じゃがいものプチ自給自足について考えてみました。有事のことまではイメージしにくいですし、まだまだできることが少ないわたしたちですが、少しずつできることを増やしながら暮らしていきたいと思っています。
自給自足と聞くと、現代社会から離れた暮らしと感じますが、そうではなく、リスクを抑えた暮らしとして“プチ自給自足”を楽しんでみてはいかがでしょうか。ではまた。