外国人観光客の増加や、国内旅行者の嗜好の変化などの理由から「民泊」が注目されています。しかし「民泊」といっても、「旅館業法」「民泊新法」という異なる制度で分類されていますし、分かりにくいですよね。さらには「ゲストハウス」という言葉もよく耳にします。
それぞれの違い、知っておきたいですよね!
そこで、自宅の空き部屋を活用して、実際に民泊を始めた筆者が民泊の基礎知識について解説してみます。
この記事では、民泊の種類、始めるにあたって知っておきたいこと、申請に必要な書類、をご紹介しています。
これで、空き部屋を使って民泊が始められますよ!
民泊の種類
民泊を始めるにあたって、まずは以下の2つどちらに該当するか考える必要があります。
私たちは、自宅の空き室でゆるく民泊を運営したいと考えていたため、【2】民泊新法による民泊を考えました。
【1】旅館業法
まず、宿泊業を考えるうえで「旅館業法」を検討してみる必要があります。
この法律では、旅館業を以下の4つに区分しています。
- ホテル営業
- 旅館営業
- 下宿営業
- 簡易宿所営業→「民泊」はこれにあたる
簡易宿所には、ベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、カプセルホテルなどが該当します。
旅館業法で「簡易宿泊営業」は、以下のように定義されています。
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業(施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業)以外のものをいう(旅館業法2条3号)
営業日数に制限はありません。ですので、一定以上の収益を目指す方はこちらを選んでください。
民泊運営に設備を整えたり、手続き・審査を進めていくなど、乗り越える壁はあります。
【2】民泊新法(住宅宿泊事業法)
次に、「民泊新法」における民泊です。
民泊サービスが普及し、マンションを無許可で民泊にする違法民泊への懸念から、2018年6月15日から施行されている制度です。新しい法律なので「民泊新法」と呼ばれています。
民泊新法では、「住宅宿泊事業」は以下のように定義されています。
旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて「住宅」に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定して1年間で180日を超えないものをいう
営業日数は最高でも180日以内であることが条件です。自治体によってはより厳しいところもあります。
民泊新法における民泊は、都道府県に届出を行うことで実施できるようになるため、手続きが簡易で初期費用も少ない点がメリットです。
ゲストハウスってなに?
ゲストハウスといわれる施設の多くは、旅館業法における簡易宿所に該当することが多いです。
しかし、より大規模な旅館営業の許可を取っているゲストハウスや、民泊新法による届出でゲストハウスとして運営しているものもあります。
つまりゲストハウスとは、国内においては制度ではなく、運営形態や運営者のアイデンティティを含んだ呼び名であると考えていいと思います。
民泊新法による「民泊」の届出前に確認したい2つのこと
【1】家主居住型/家主不在型
民泊新法における「民泊」は大きく
- 「家主居住型」
- 「家主不在型」
に分類されます。
例えば、空き家になってしまった実家を民泊にしたいという場合は「家主不在型」となります。
自宅の空き室を使う場合は「家主居住型」なのはもちろんですが、敷地内にある住居であれば「家主居住型」となる場合もあります。
ちなみに「家主不在型」で民泊を行う場合は、以下の必要があります。
- 住宅宿泊管理業者の登録を行う
- 住宅宿泊管理業者に委託する
【2】宿泊室の面積
宿泊室(寝るところ)の床面積の合計が50㎡以下というのもポイントです。
- 50㎡以下→「安全確保の措置・消防用設備等の設置」が不要となり、住宅用の火災報知器のみで済みます。
- 50㎡を超える→「非常時照明・非常時退避装置」等が必要となり、初期費用や認可に関わる時間がかかります。
届出に必要な書類を準備しよう
届出にはいくつかの書類が必要です。
茨城県の担当窓口(生活衛生課)に相談しながら、必要なものを揃えていきましょう。法人で経営する場合や、民泊をする物件の状況などで必要な書類が異なります。
今回は私たちの例(宿泊室50㎡以下の古民家空き部屋で民宿運営)で説明します。
(1)住宅宿泊事業届出書(第1号様式)
上記からダウンロード可能です。記入例も掲載されています。
(2)消防法令適合通知書
@民泊を行う地域の消防署
消防署へ事前に申請する必要があります。とはいえ、宿泊室の面積が50㎡以下であれば、それほど難しくはありません。
消防署に電話すると、担当者が分かりやすく指導してくださいます。基本的には、正しい位置に火災報知機を付ければOKです。
(3)市町村の長の証明書(身分証明書)
@市町村役場
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の証明です。
(4)住宅の登記事項証明書(不動産)
@管轄の法務局
オンラインでの申請もできるようです。
(5)住宅の図面
住宅の図面が必要です。
建築士に頼む必要はなく、メジャーで正確に長さをはかり、手書きやパワーポイントなどで作成したもので十分です。
図面には記入必須の事項があるので、事前に調べておきましょう(茨城県の場合、ホームページ内の必要書類と同じ部分に記載あり)。
(6)賃貸人及び転貸人が事業のための転貸を承諾したことを証する承諾書
これは、以下の2点どちらも該当する場合のみ必要になります。
- 民泊を運営する不動産の所有者が世帯主である
- 事業の申請は配偶者が行う
つまり私たちの例で言うと、不動産の所有者名義は夫で、申請書の代表者名は妻だったため、承諾書が必要でした。
(7)欠格事由に該当しないこと等を誓約する書面
@茨城県のホームページ
ダウンロードし、誓約する書面にサインしましょう。
♢
ここまでご紹介してきた届出は郵送でも可能ですが、窓口提出がおすすめです。間違いがあった場合、その場で修正してもらうことができますので。
その後の流れは?
私たちの場合、1週間程度で県から書類一式が届きました。民泊の看板、注意点などが書かれた書類が同封されていました。
これでAirbnbの登録などを進め、実際に民泊を運営することが出来るようになりました。
担当部署:保健福祉部生活衛生課環境・動物愛護
茨城県の民泊情報:住宅宿泊事業(民泊)
まとめ
ここまで民泊の基礎知識と民泊運営を始めるにあたって必要な書類のご紹介をしてきました。では今日はこのへんで。