いわゆる失業保険、失業手当として語られている雇用保険ですが、正確にはいろいろな種類があります。なかでも失業した時にもらえる給付金の正式名称は「求職者給付の基本手当」になります。
結婚や地方移住等をきかっけに失業した場合、状況によっては特定理由離職者として扱われメリットが生まれる可能性があり、一般的な受給の流れと異なってきます。どんな違いがあるのでしょう?知っておきたいですよね。
そこで、実際に特定理由離職者として給付金をもらった経験のある筆者が解説します。
この記事では、特定理由離職者のメリット、受給までの流れ、特定理由離職者になる条件、そもそもの雇用保険の概要、種類をご紹介しています。
これで「雇用保険の特定理由離職者とは何なのか」理解できるようになりますよ!
※この記事ではいわゆる失業手当を正式名称「基本手当」と記載しています。
どのようなメリットがあり得る?
最初に結論だけ書いてしまいます。
特定理由離職者になるメリットは、3カ月間の給付制限を待つことなく基本手当(いわゆる失業手当)をもらえることです。
通常、基本手当をもらう時には3カ月間待たないといけないんですね。それがショートカットされてお金がもらえるよ、ということになります。
そうすることによって、職歴のブランクを気にしなくてよかったり、生活費が滞ったりする心配がなくなります。
これが最大のメリットです。
結論は以上なのですが、もう少し詳しくみていきます。
通常は3カ月待たないといけない
念のために書いておくと、基本手当はあくまで再就職を目指している人向けの給付金です。
受給期間中、ハローワークのスタッフから就職活動状況もずばずば聞かれますし、厳しく突っ込みが入ります。そのわりに熱心に相談にのってくれたり、有益な情報をもたらしてくれることもほとんどなく。……結構ハローワークが嫌いになりました(小声)。
受給期間中、地域によってはハローワークの方とうまく付き合う方法も考えることになるかなーと思います。話がそれました。
特定理由離職者のメリットを分かりやすくお伝えするために、まずは一般的な手続きの流れをご紹介しておきます。時系列順になっています。
- 離職
- 求職の申し込み、受給資格の決定
- 職業講習会
- 雇用保険説明会
- 7日間の待機期間
- 3カ月の給付制限(※すぐにもらえるわけではありません。)
- 失業認定
- 基本手当の支払い
- 4週間ごとに失業認定/支給
- 就職/支給終了
離職してからすぐにお金はもらえず、3カ月の給付制限がある点に注目してください。
特定理由離職者は3カ月待たなくてOK
ついさっきご紹介した、受給までの通常の流れでは3カ月の給付制限があったと思います。失業してもすぐに給付金がもらえるわけではなく、生活が厳しくなる!と思っちゃいますよね。
ですが、この3カ月の給付制限を受けずに済む人たちがいます。
それが「特定理由離職者」と呼ばれる人たちです。
どうやったらなれるのでしょう?
特定理由離職者になるための条件
ハローワークが定めている条件に当てはまっていると認められます。条件は以下のようなものです。
いろいろありますが、特に赤字に注目してください。
【正当な理由のある自己都合により離職した者】
- 通勤不可能または困難(結婚・地方移住するとこれに該当する可能性あり。)←注目
- 体力不足、心身障害など
- 妊娠、出産、育児など
- 家庭事情急変
- 企業整備による人員整理での希望退職
【期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者】
- 更新を希望したにも関わらず、更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限ります。
結婚・地方移住をした場合「通勤不可能」の理由によって、特定理由離職者になることがあります。
実際に私がそうでした。
結婚前は港区(神谷町駅)で仕事をしていたのですが、茨城県に住むことになり通勤に2時間以上かかることが分かりました。
「2時間以上」というのがポイントのようで、その旨をハローワークの担当者に伝えると特定理由離職者にしてもらえる可能性があります。
あくまで担当者判断なので、断定はできません。ですが電車の時刻表などをもとに、きちんと説明をすれば大丈夫かと思います。
最大のメリット
特定理由離職者になれば、3カ月の給付制限がなくなるので基本手当の受給が早まり、次の仕事も見つけやすいです。履歴書のブランクも気にせずに済みます。
これが大きなメリットだと思います。
特にいま都内で働いていて、将来は結婚して地方移住したい!と検討している方であれば特定理由離職者になれる可能性が高いので、ぜひハローワークで相談してみてください。
雇用保険の基礎知識
せっかくなので、そもそも雇用保険とは?について気になる人向けに以下基礎知識をご紹介しておきます。
概要
まず雇用保険とは、労働者が失業または雇用の継続が困難になる場合に必要な給付等を行う保険を言います。
保険者(保険料を徴収し事故発生時、保険金を支払う義務を負う人)は政府です。窓口は公共職業安定所、いわゆる町のハローワークです。
雇用保険適用事業で働く労働者は、原則として被保険者(保険の対象になる人)となりますが、その種類は4つあります。
- 一般被保険者…離職日まえの2年間で被保険者期間が通算12カ月以上ある人。
- 高年齢被保険者…65歳以上で、常用で働く人。
- 短期雇用特例被保険者…出稼労働者手帳を持っている人。
- 日雇労働被保険者…日雇労働被保険者手帳を持っている人。
どんな種類がある?
雇用保険はざっくり二つに分かれます。
- 失業等給付…労働者を支給の対象とするもの。
- 雇用二事業…労働者の雇用安定、能力開発を行う事業主への助成を行うもの。
今回は1番の失業等給付について掘り下げてみます。
- 失業等給付=
- 求職者給付(このなかに基本手当が含まれている)
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
いろいろあって、いわゆる失業手当は「求職者給付のなかの基本手当」と呼ばれているんだな、ということが分かればいいかなと思います。
いくら・どれくらいの期間もらえる?
基本手当は、離職日まえ6カ月の賃金をもとに計算されます。賃金日額の約45~80%相当がもらえるとされています。
- 基本手当の日額(もらえるお金)=賃金日額(これまで働いていた時の給料)×50~80%
※賃金日額には賞与、一時金は含みません。最後の6カ月に支払われた給料の総額を180で割ればOKです。
大体のイメージとしては、手取り20万円だった人は基本手当を10~16万円程度もらえます(受給中に内職等をすると減ります)。
もらえる期間は人によってまちまちです。特に「どれくらい長く勤めたか?」は大きな判定基準です。例えば以下を参考にしてみてください。
勤めた期間が……
- 1年未満:対象外
- 1年以上10年未満:90日(約3カ月)
- 10年以上20年未満:120日(約4カ月)
- 20年以上:150日(約5カ月)
※雇止め、倒産、解雇などによる受給者はより手厚い給付があるため、別途ご確認下さい。
まとめ
ここまで雇用保険(求職者給付の基本手当)、特定理由離職者についてご紹介してきました。難しめの言葉もありましたが、参考になったら嬉しいです。ではまた。