これから地方へ移住したいと考える人の中には、テレワークが出来ることを前提にしている方も多いと思います。
ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できるテレワークは、「人口減少時代における人材確保」や「地方創生」に寄与し、「働き方改革」にも有効な手段として期待されています。一方で、コミュニケーションや業務評価方法など新しい方法に戸惑いも見られ、一時的と考えている人も多くいます。
果たしてテレワークは定着するのでしょうか?これからテレワーク移住を検討されている人にとっては気になるところですよね。
ということで、2021年1月27日に開催された「総務省働き方改革セミナー 『働く、が変わる』テレワーク in 三重」を聴講した筆者が内容をシェアしてみます!
セミナーでは「地方や中小企業まで今後もテレワークが普及していく」と思える事例がありました。5名の方が登壇してくださったのですが、今回は「移住とテレワーク」に関することを抜粋してご紹介します。
今後もテレワークが続くのか?という不安が少しでも払しょくされますように!
テレワークをめぐる最新動向
テレワークは慣れない労働環境下で、生産性が低下することが指摘されています。
しかし、テレワークを積極実施している企業においては、以下の成果が出ているようです。
- テレワークを積極実施している企業の6割で労働時間減少
- 労働生産性の伸び率が13~18%程度向上(テレワーク単体及びテレワークと組み合わせた取組を行った企業のデータです。)
- 採用活動の変化(労働者にとって、企業がテレワークを実施しているかどうかが企業選択の理由になっているそう。)
テレワークは労働者だけでなく、雇用者にもメリットのある新しい働き方として定着しつつあるということです。
導入事例
地方自治体の例
桑原さんのプロフィールをざっくりご紹介します。
- 35年以上に渡って情報技術の研究・開発に従事
- 米系IT企業にてエンジニアとして活躍
- アンダーセン等でコンサルティングに携わる
- 2011年4月に広島県CIO(非常勤)に就任
- 2016年からは常勤職員として情報戦略総括監に就任(働き方改革、情報セキュリティ対策等を担っている)
西日本豪災害が記憶に新しいですが、広島県は豪雨災害そして新型コロナウイルスにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、危機をチャンスにしてきたそうです。
2014年に桑原さんがCIO(情報戦略統括官)に就任し、リモートワークを掲げ「ベストプラクティス」を推進。さらには管理職にはiPadを配り、議会のペーパーレス化に取り組みました。
しかし、初年度のテレワーク(どこでもワーク)利用者数0人。出来るだけ利用しやすいように制度の見直しを重ね、その後利用者数は増加し続けたそうです。
そんななか、西日本豪雨(2018年)に見舞われます。出勤できない職員も多くいましたが、専用PCの貸出によってテレワークが行われていたため、災害時には機能しないと身をもって感じたそうです。
そこで、クラウドストレージ、パブリッククラウド、端末の自由化などを実施したそうです。
その成果もあり、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では、テレワークの利用者はのべ2万人超(2020年5月)、その後ものべ1万人を推移しているということです。
テレワークにより「平時でも非常時でも同じ働き方ができる」自治体は、県民・市民を支えてくれる存在としてもありがたいですよね。
中小企業の例
八尾トーヨー住器(株)を簡単にご紹介します。
- 社員数141名の中小企業
- 建築資材販売、建築工事、不動産、ハウスクリーニングを手掛ける
- 厚生労働省「令和元年度テレワーク宣言企業」に選出
同社では、育休後の女性社員が在宅勤務導入やしたり、中古住宅をリフォームしたサテライトオフィスを設置するなど、テレワークを積極的に推進しているとのことです。
かつて時間で稼ぐ意識が強く、労働環境に関する問題が多くあったそうです。
例えば、
- 若手・ベテランに限らず離職者増
- 採用苦戦
- 社員や家族からの不満噴出
- 同業との価格競争に陥る
業界的によくありそうですよね。
同社は、これらの問題を改善するためIT化を進めようとします。
しかし、パソコンの使い方も分からない人が多いくらいの業界なので、まずは管理職・営業系社員にタブレット端末配付することから始めたそうです(2012年)。
そして2015年より、オフィスのフリーアドレス化・サテライトオフィス化を推進。2016年にはこれまで5枚カーボンだった社内の受注書(受注伝票)を電子化します。
2019年からは、育休後の社員1名がフルタイム在宅勤務を始めます。
緊急事態宣言下では、現場系社員や一部管理職を除き全社員がテレワーク、その後も半数ずつが交代で行うなど、テレワークが定着しつつあるそうです。
これらの取組により、以下の効果があったそうです。
- 移動時間削減
- 残業時間63.3%削減
- ライフイベントによる離職ゼロ
- また1名は介護をしながら仕事が続けられている
- 新卒8名(2019年4名、2020年4名)確保
なんと現在、2軒目のサテライトオフィスとして、奈良県の築158年の古民家をリノベしているそうですよ!地方で暮らし働くことも可能になりそうですね。
総務省はテレワーク普及のためにどんな事業を行っている?
総務省では、テレワークの普及には以下3つの課題があると捉えています。
- 体制
- 設備
- セキュリティ
上記の課題に対するサポート事業には以下があります。
- テレワークマネージャー相談事業…テレワークを実施したい企業が、専門家によるICT導入のアドバイスが受けられる制度。現地派遣も行っているようですが、WEBであれば相談回数・無制限に相談に乗ってくださるそう。
- テレワーク・サポートネットワーク事業…セミナー開催、相談会開催、常設窓口開設によるテレワーク普及支援。民間の取り組みを国が支援してくれるということです。
まとめ【テレワークが定着すると思える訳】
「総務省働き方改革セミナー」において、ポストコロナにおいてもテレワークが普及・定着すると思える要素が多くありました。
実際に、テレワークを積極実施している企業において、残業時間の減少や労働生産性の向上があるということでした。
僕は、それはWEB関係の一部の企業のことじゃないかと他人事のように思っていたのですが、そうではなく、地方自治体や中小企業にも広がりを見せているとのことです。
また、テレワークは、労働者にとってのメリットだけでなく、残業時間の減少や労働生産性の向上は企業にもメリットがあります。さらには中小企業がテレワークを導入することで、新卒採用などが有利に働くということでした。
総務省も手厚くテレワークを推進してくれているので、新しい働き方が推進されて、地方移住者が増えるかも知れませんね。
- 総務省働き方改革セミナー
- 『働く、が変わる』テレワーク in 三重
- 開催日時 2021年1月27日(水)13~15時50分
- 主催 総務省東海総合通信局、厚生労働省三重労働局、三重県、東海情報通信懇談会
- 後援 津市、三重県商工会議所連合会、津商工会議所
講演資料はホームページからダウンロード可能です。
